epiphany

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NARA 米海兵隊のナバホコードトーカーの写真

日本軍は、沖縄の住民が沖縄語をしゃべることを禁じ、沖縄語を使えばスパイとして処分する軍令を出した。これにより沖縄人は沖縄人であるというだけでスパイとみなされ処刑される危険にさらされた。一方、3月23日付の「戦闘指令」で、軍は部隊に対し、沖縄人の服装をして沖縄語を話し敵を欺瞞する必要がある、と命じていたことが米軍の資料でわかっている*1

 

ゆえに米軍も、地元民になりすまして逃れようとする日本兵を見分けるため、捕まえた捕虜が本当に民間人なのか、沖縄語で尋問することを忘れなかった。まさに沖縄語は試し言葉「シボレス」 (shibboleth) *2となった。

 

日本軍は、劣勢の原因は沖縄人スパイのせいに違いないとして、沖縄人スパイ陰謀論にどっぷりと浸かり、無実の住民を処刑し始めるが、そもそも日本軍の諜報は基本的にズタボロで、暗号はほぼ最初から筒抜け。太平洋上の戦場で遺棄された日本軍の機密書類や、死亡した日本兵の手帳日記すら徹底して解析され、情報統合された。

 

では、対する米軍の諜報戦略はどのようなものだったのか。

 

米軍は、パールハーバー襲撃後、直ちに日系アメリカ人の強制収容を進めながらも、日本軍の暗号傍受や捕虜尋問、GHQ の通訳に大学の研究者、日系や沖縄系の二世を動員し、語学兵を構成した。

 

また戦争史上唯一クラックされることがなかったとも語られる米軍の暗号システムには、米国政府が長年の厳しい同化政策で絶滅危惧言語 (endangered languages) に追い込んだアメリカ先住民の言語と、それを語る先住民の若者たちが利用された。

 

先住民の「暗号部隊」(コード・トーカーズ) は、沖縄戦でも活躍したが、アメリカ軍のトップシークレットであったためか、彼らを記録する写真は、現時点で数枚しかない。

 

NARA 米海兵隊のナバホコードトーカーの写真

National Archives NextGen Catalog

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:保坂廣志 2015, p. 115

*2:シボレスとは「特定の人種や民族などを判別するために用いられる言葉のこと。シボレテは歴史上しばしば、虐殺の対象を選別する際に用いられてきた。シボレテはヘブライ語で「穀物の穂」や「川の流れ」などを意味する語だが、「士師記」によると、ギレアデ人がヨルダン川を渡って逃げてくる人々にこの語を言わせて、「sh」の音が発音できなければエフライム人だと判断して殺害した。」『実用日本語表現辞典』